晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「あなたに手紙を出したのは、多分、お医者さんに命の期限を告げられたから」

「……え?」


脳内で、警告音がけたたましく鳴り響いている。

受け止めなきゃ。そう思うのに、聞きたくないと思ってしまう。だけど、耳を塞ぐことも出来ない。


そうこうしているうちに、リョータのお母さんが顔を悲しく歪めた。


「崚太にはもう、──あまり時間が残されてないの」


ずぶん、と。完全に沼に飲み込まれた。

目の前が真っ暗で、頭の中が真っ白で。多分、難しい言葉は何一つ使われていなかったのに、意味を瞬時に理解することが出来ない。

今、なんて……?


「ずっと、苦しい治療に耐えてきたんだけど。冬に差し掛かる頃……お医者さんに、もう……長くないって……っ」


堪え切れなくなったように、リョータのお母さんの目から大粒の雫が弾けた。

その姿を映していた私の目も、涙に濡れて見えなくなる。
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