晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「あの子ね、沢山考えたんだと思うの。残された時間で何が出来るか。何がしたいか。その先にいたのが……きっと、あなただった」

「……っ」

「どん底から救い出してくれたあなたと言葉を交わすことが、あの子の最後の望みだったのよ」


声を上げて泣くことを、もう我慢出来なかった。


痛い。胸の奥も喉の奥も、目の奥も。

痛くて堪らないのに、リョータやリョータのお母さんが感じる痛みのほうが何倍も何十倍も大きいことがわかるから、更に痛い。


私はリョータのことを、本当に何一つ知らなかった。

どんな気持ちで手紙を出してくれていたのかも。そこにどんな意味があったのかも。

手紙でリョータは、自分がどこの誰かは明かせないと言っていた。何か事情があるのだろうと、私が追求することはなかった。

でも本当は、リョータは知ってほしかったのかもしれない。思い上がりかもしれないけど、リョータは私に見つけてほしかったのかもしれない。

もしそうでなかったとしても、探し出せばよかった。
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