晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
少し狼狽えてしまったのは、彼女の視線が相変わらず鋭く、表情は険しいから。

やっぱり彼女は、私をよく思っていないらしい。


「……今日も、崚ちゃんのとこ行くワケ?」


腕を組んで、仁王立ちで、そんなことを聞いてくる。

少し首を傾げてから、私は静かに頷いた。


「行くよ。毎日行くって決めたから」

「来ないで、って言ったら?」

「……え?」


予想外の台詞に鼓膜を震わせられ、困惑してしまう。

彩音ちゃんの目を真っ直ぐに見ても、彼女が何を考えてそう言ったのか、読み取ることは出来なかった。


「……もういい」


溜め息と共に吐き捨てて、彩音ちゃんは私を抜き去っていく。

その後ろ姿はあまりに小柄で、少し、不安になった。


「あれ、あいつ……」


ぬっと隣に人影が現れ、誰かと思えば康介だった。

これから部活に向かうのだろう、リュックを背負ったままで廊下を歩いていく彩音ちゃんを眺めている。


「何、まさか知り合い?」
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