晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「知り合いっつーか……前に言っただろ、お前と付き合ってんのか聞かれて、否定したら舌打ちされたって」


言われて、必死に記憶のピースを掻き集める。

そういえば……康介がモテるって知った春頃、そんな話をしたっけ。


「それがどうかしたの?」

「どうかって……その時の女が、あいつなんだよ」

「……え」

「ちづよりチビで、泣きぼくろがあって、つり目。こんだけ印象に残ってんだもん、間違いねぇよ」


彩音ちゃんを見た時、どこかで聞いたような特徴だなぁとは思っていた。

何かが記憶を引っ掻いて、でも姿は現さないから気に留めなかった。

……そういうことか。私は彩音ちゃんではなく、康介から聞かされた彩音ちゃんの特徴だけを知ってたんだ。


「彩音ちゃんは、なんで康介にそんなことを聞いたんだろ」

「さぁな。自分の好きなやつがお前のこと好きで、お前が俺と付き合ってれば安心だとか、そんなふうに思ってたんじゃねーの」


ま、俺の知ったこっちゃねーけどな。ケラケラ笑って、康介が先を歩いていく。

私はというと、その場から動けないでいた。
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