晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「リョー……タ」


言いたいことが沢山あった。伝えたいことが数えきれないほどあった。

なのに、いざ彼を前にしたらそんなの全部吹っ飛んで。


「リョータ……っ」


キャリーバッグから手を離し、リョータの元へと駆け寄る。

クリーム色の布団から伸びる彼の右手を両手で包んで、私は子どもみたいに咽び泣いてしまった。


あったかい。確かにここにある温もりに、また涙が止まらなくなる。


「登坂、さん」


しゃがみ込んだ私の頭上で、掠れた声に呼ばれた。

涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げると、リョータが私を見据えていた。


「母さ……から、いろい、ろ、聞いた」

「……うん」

「手紙、出せな……くて、ずっと……自分のこ、と隠してて……ごめん、ね」


初めて聞くリョータの声は、心地よい低音でじんわりと胸に沁みる。

ずっと、聞きたかった君の声。


「何言ってんの。リョータが謝ることなんて、何一つないんだよ」


両の手に力を込めて、出来る限りの笑顔を浮かべた。
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