晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「っと。あんまり長居しても悪いし、今日はもうお暇するね」

「そっ、か。来てくれ、て……あり、がと」

「ううん。リョータさえ迷惑じゃなかったら、明日も来ていい?」

「もち、ろん。……そうだ」


パイプ椅子を畳む私を見上げて、リョータが何やら思い出した様子。

ん? と顔を覗き込むと、彼は視線を再びベッドサイドの棚に向けた。


「てが、み……書いたんだ。そこ、の引き出し……入ってる」

「えっ」


リョータの言動は、私の度肝を抜いた。満身創痍で、話すこともままならない様子なのに。

言われるままに引き出しを開くと、見慣れた封筒が姿を見せた。


「バカ……何やってんの。安静にしてなきゃ……ダメでしょ」

「はは……言われると、思った」


切れ切れに、苦しい息の下でリョータが笑う。

なんで笑ってんのよ。腹が立つのに、怒れない。

同時に幸せを感じて、頬が緩んでしまう。
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