晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
正しいことではないとわかってるのに、嬉しいと感じる私がいるんだ。


「ありがと。返事書いて、明日持ってくる」


封筒を胸に寄せると、リョータはホッとしたように頷いた。




リョータに別れを告げ、病室を後にする。

帰ろうと廊下を歩いていると、今来た様子の彩音ちゃんとかち合った。

瞬間、鋭い舌打ちが飛んでくる。ろ、露骨……!


「い、今からお見舞い……?」

「…………」


うっわ、気まずー……。

流れる空気に耐えられなくて、ヘラヘラ笑うことしか出来ない。

そんな様子が癇に障るのか、彩音ちゃんの眉間のシワがどんどん深くなっていく。


「そ、そういえば……リョータが目を覚ましたって、わざわざ康介に言いに行ってくれたんだよね」

「……あんたの連絡先、知らないし。咄嗟に思い浮かんだのが、あの男だったの」


リノリウムの床を睨んで、ぶっきらぼうに彩音ちゃんが答えた。


「教えてくれて、ありがとう。おかげで、大会終わってすぐに会いに来れた」

「……あんたは、崚ちゃんのことが好きなの?」


脈絡なく、彩音ちゃんが切り込んできた。

あまりに急で、思考が停止してしまう。
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