晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「へ……?」

「だから。崚ちゃんのこと、好きなのかって聞いてんの」


言葉に詰まる。あらゆる可能性が脳内に渦巻いて、何をどう答えるのが正解なのかわからない。


「そ、そりゃ……好き、だよ。ずっと手紙でやりとりしてきたし、大切な……」

「大切な友達、なんて言ったらはっ倒すから」


ギク。続けようとしていた言葉を掻っ攫われ、更にははっ倒す、と。

私のほうが一応先輩なんだけど、頭が上がらないというかなんというか。


「私が聞いてんのは、恋愛対象として好きかどうかだよ。触れたいとか抱き締めたいとかキスしたいとか、そういう類の話!」

「キっ、キス……!?」


馴染みのない単語に、わかりやすく狼狽えてしまった。

だって、今まで部活ばっかりで、恋なんてしたこともなかったんだもん……!

そんな私を、彩音ちゃんが冷めた目で見ている。


「あ、彩音ちゃんは?」

「……は?」

「そういう彩音ちゃんは、リョータのこと……どう思ってるの?」


苦し紛れに問いを投げ返してみたけれど、失敗だったとすぐに後悔した。

彩音ちゃんの少し吊り上がったアーモンド形の目が、じわりと滲んだから。
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