晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「あや……」

「好きだよ」

「……っ」

「子どもの時から、ずっと好きだった。背中を追いかけるんじゃなくて、肩を並べたかった」


瞳に涙の幕を張って、それでも尚、気丈でいようと私を真っ直ぐに睨みつけている。

私に泣き顔を見せるのが不本意だというように。

“まさか”が現実だった。でも、だったら。


「リョータの手紙、どうして私に届けてくれたの……?」


想い人と他の女を繋ぐ架け橋を担ったのは、どうして。

私が聞くと、彩音ちゃんはその端正な顔を歪めた。


「そんなの……崚ちゃんが望んだからに決まってるじゃない。彩は絶対に嫌だって言ったけど、一生のお願いだって崚ちゃんが言うから……だから、仕方なく届けてたんだよッ」


静かな病院の廊下に、溢れ出る感情を押し殺そうとする彩音ちゃんの高音が響く。

それが私の心にも深く突き刺さったのと同時に、思い出す。

リョータにはもう時間が残されていないという、お母さんの言葉を。


迷っている時間も尻込みしている時間も、私にはもう残されていないんだ。
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