晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
行っても追い返されることは目に見えているので、病院には行けない。


リョータ、もう病室移動したのかな。体調、悪くなってたりしないかな。

私が病院を見上げた時はカーテンが閉まってたけど、今日も私の走る姿を見ててくれたのかな。

例えちょっとの時間だったとしても、ほとんど毎日会っていたから、会えなくなるとこんなにも寂しい。

テストなんか、さっさと終わればいいのに。

あぁもう。早くリョータに会いたいなぁ……。




「コレ、スライム? それとも、かつて登坂だったもの?」

「多分スライム。それも、暑さでデロデロに溶けたやつ」

「……登坂だっつーの」


机に突っ伏していると、何とも勝手な会話が頭上で繰り広げられ始めた。

顔だけを上げてギロリと睨むと、そこにいた2人がおかしそうに口角を上げていた。うちの教室を訪れた真田と、近くにいた南山だ。


「そんな睨むことないじゃないのよ。かなりフラストレーション溜まってんのねー」

「……別に、そんなんじゃないけど」

「けど?」


聞き返されて、押し黙る。反射で投げた接続助詞は、図星だったが故にどんな言葉とも繋げられない。
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