晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「まぁ、気持ちもわかるけどね。陸部、テスト明けからずっと練習してるし」


真田には、リョータとコンタクトがとれたことしか話していない。

信用してないとか、そんなんじゃない。ただ、リョータを取り巻く問題はあまりにデリケートで、直接の接点がないからってペラペラ話せるものじゃなくて。

色んなことを濁して簡潔に話をした私に、真田が深く追求してくることはなかった。


「毎日遅くまでグランドに監督の声響いてるもんなぁ」

「日が暮れるのも遅いし、練習するにあたって絶好の機会なんでしょうね。ま、それはサッカー部もなんだろうけど」


話題の矛先はサッカー部である南山に移り、私は再び頭を垂れる。

全国決まったからうちの顧問も熱が入ってるだの、家に帰ったらお母さんが既に眠りについた後だったの。そんな会話を聞き流しながら、至近距離の机に向かって深い息を吐いた。

我ながら深く重い溜め息だと自覚しているけど、仕方ないとも思っている。


テストは先週の土曜日で終わった。ようやくリョータのところに行ける、そう思った私のところに飛んできたのは、練習開始時間繰り上げの報せだった。

部活が始まるまでの間にお昼ご飯を済ませ、リョータを訪れてから学校に戻って部活に行く。そんな私の完璧なスケジュールは、一瞬にして崩れ去った。

練習が終わったら今度こそ。そう意気込んでいたのに、その日学校を出たのは面会時間をとっくに過ぎてからだった。
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