晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
通学時には首に巻いていたマフラーを広げてブランケット代わりにすると結構あったかいんだ、これが。


「今日ほんとに寒いね」

「布団から出たくなかったよー」


ぼんやりと遠いところで聞こえる、クラスメートの会話。

それと、もっと遠くで聞こえる甲高いサイレンの音。しばらくすると止まったから、多分隣の病院に搬送されたんだろう。

毎日毎日聞こえるその音は好きじゃない。

サイレンなんて、滅多に聞くことのないものになればいいのになぁ。




「登坂」


名前を呼ばれたのと頭を叩かれたのはどっちが先か。


……誰だろう。

おおよその見当は付いていながらも薄く目を開けて顔を上げると、そこに立っている人物の姿をようやく確認出来た。予想的中。
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