晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
だからこそ一緒にいて楽だし、これからも仲良くしたいと思うんだ。


「テスト返し、何からだっけ?」

「数II」

「うげ、いきなり大本命」


問題用紙を手に座席に戻ると、黒くて長い艶めいた髪を耳にかけながら、真田が小さく息を吐いた。

大人っぽい顔立ちが、呆れた表情を作る。


「今回はまだ易しかったじゃん。大丈夫でしょ」

「真田の易しいは易しくないの!」


真田は部活をバリバリこなす一方で、成績も優秀だから本当にすごい。

10パーセントでいいから、その頭脳を分けてほしいよ。

もちろん、努力あってのことだってわかってるけどさ。


「日本史とか生物とか、暗記系なら何とかなるんだけどなぁ。数IIと英表だけはどうにもなんない」

「一夜漬けなんてするからだよ。積み重ねが大事」

「うわぁ、正論」


がくーっと大袈裟に項垂れたのと同時に、1時間目の開始を告げるチャイムが鳴る。

今日は出席番号順の席だから、普段は前後の席の真田とはちょっと離れてしまう。

って言っても「さ」と「と」だから、そんなに遠くはないけれど。
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