晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「長谷ー!」


グランドの向こうから、南山が康介の名前を呼んだ。

語尾に怒りマークがいくつかついてそうな声色で。


「やっべ」

「ほら、王子様が迎えに来たよ。早く戻りなさーい」

「王子とか気色悪いこと言うなよ」


げんなりした康介が、私の頭をわしゃわしゃと乱す。

あー! せっかくポニーテールにしてたのにー!


「もう! 早く戻って怒られろ、バカ!」

「ハイハイ、戻りますよ」


ボサボサになった頭を押さえて、歩いていく康介の背中を睨む。

ったく、相変わらずバカ康介。

でも……うん、元気出たや。


「相変わらずラブラブですねー、先輩達」


後ろからひょこっと姿を見せたのは、タイムを測っていたはずのトモちゃん。

い、いつの間に……。


「ラブラブとかそんなんじゃないよ」

「えー。醸し出す空気、もはや夫婦でしたよ」

「夫婦!?」

「みんな言ってますってー」


狼狽える私をよそに、トモちゃんはケラケラと笑う。

うーん、ほんとにそんなんじゃないのになぁ……。
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