プロポーズ(第4話)
お兄ちゃんとあたしは八つ違い。ちょっと年の離れた兄妹だ。
あたしが小さなころ、サラリーマンをしているお父さんは、とても仕事がいそがしかった。夜遅くまで残業し、休みの日も会社へ行くことが多かった。
お父さんのかわりにあたしの面倒をみてくれたのが、お兄ちゃんだった。
休みの日なんか、お母さんとお兄ちゃんとあたしで、よくお出かけしたものだ。
大して背は高くないけど、大してイケメンでもないけど、とってもやさしいお兄ちゃんのことが、あたしは大好きだ。
そのお兄ちゃんが結婚するなんて……。
「まあ……さっさと決めちゃったほうがいい場合だってあるんだ、カコ」
お父さんがいつもの調子で、とつとつとしゃべった。カコというのがあたしの名前だ。
「そうね、早めに話を進めるにしても……とにかく、どんなかたなのか、お会いしてみないとね」
お母さんの言うことを聞いていて、あたしはまた、あれ、と思った。
なにか変だ。
お父さんもお母さんも、今ひとつ嬉しそうじゃないのだ。
長男が結婚するというのだから、普通なら、もっと嬉しそうにしてもよさそうなのに。