プロポーズ(第4話)
その理由は、食事の後片づけを手伝っていたら、お母さんが教えてくれた。
相手の女性というのが、お兄ちゃんより三つも年上で、離婚歴があるという。バツいちだ。
おまけに、相手は妊娠しているのだそうだ。
「ええーっ、できちゃった婚? あのお兄ちゃんがー?」
「大きな声出さないで。それと、あちこちで言いふらさないのよ」
またお母さんにたしなめられた。
あたしは、ハアー、と深く息をついた。
頭のなかにムクムクと映像が湧きあがってくる。相手の女の映像だ。
きっとキャバクラ嬢なみに、顔を盛っている女に違いない。ブスのくせして、メイクでごまかして、美人もどきに見せている。高飛車で、前のだんなに家を追い出され、おとなしいお兄ちゃんに狙いを定めた。
――今日は安全日だから。
とかなんとかだまして、ベッドに誘いこみ、みごと妊娠。
――オーホッホッホッ、子供ができちゃったわ。さあさあ、責任とってちょうだいな。
青ざめ、うなだれるお兄ちゃんを、ほとんど脅迫するようにして、結婚を約束させた。
……とまあ、そんなところに違いない。
あたしはギリギリと歯を食いしばった。
おのれー、キャバ女め。どうしてくれようか。
あたしは明日の戦いにそなえて、早めに寝た。