プロポーズ(第4話)
あたしが訊くと、ショウコさんは一瞬目を開いたが、すぐに恥ずかしそうにうつむいた。横目でとなりのお兄ちゃんのほうを見やる。ふたりの目と目が合う。
恋人どうしだけに通じる目と目の会話、というのを、あたしは初めて目の当たりにした。
「カコ、失礼よ」
またお母さんにたしなめられた。
あたしはおどけたふりで、ペロリと舌を出して見せた。
お昼は近くのすし屋から出前をとった。
結納をどうするとか、結婚式はごく内輪で行なうつもりとか、おおまかな日取りだとか、いろいろ話し合った。
最後に、
「ふつつかものですが、よろしくお願いいたします」
と、ショウコさんが頭を下げたときには、彼女はもう我が家の一員になっていた。
そして、あたしは大好きなお兄ちゃんを失ったのだった。