プロポーズ(第4話)
いつだったか、
――クラシック音楽の人で、肩にちっこいギターのっけて、棒でこすって、キーコキーコ鳴らしてるのがいるだろう?
なんて恐ろしいことを平気で言っていた。
――お前、バイオリンも知らないのかよ。
と、みんなに笑われていた。
バカだけど、だまっていると、それなりに顔がいい。だから意外に女の子に人気がある。
一年生のとき、三年生の女子に誘われて、いっときいい仲になったこともある。
そんなカバサワとあたしは、小学校からの腐れ縁だ。気楽におしゃべりできる。いっしょにいるとほっとする。
でも、恋とか、そういうのじゃない。たぶん。
だって、恋っていうのは、ある日突然ストンとはまりこんで、その人以外にはなにも見えなくなって、世界はふたりだけのもの、ってやつでしょ。
カバサワとはそういう感じじゃないなぁ。
でも、親友のミキちゃんはなにをカン違いしてるんだか、あたしがカバサワといっしょに帰るっていうと、遠慮して別の友だちのほうへ行っちゃうんだよね。
まあ、そのへんはともかくとして。
あたしがくり返しお兄ちゃんを盗った女の悪口を言い、カバサワが何度もうんうんとうなずいて、家の近くにある公園のそばまで来たときだった。