プロポーズ(第4話)
「あぶないっ」
「きゃっ」
あたしはものすごい力で、カバサワに抱きすくめられていた。
あたしたちのすぐそばを、キキキ、と強烈な音をたてて、一台の乗用車が走り抜けていった。
「バッカやろうっ」
カバサワがどなったときには、車はもう道路の向こうへ遠ざかっていた。
「カコ、大丈夫か? けがは?」
「あ……うん、大丈夫……」
あたしはぼうぜんとしていた。轢かれそうになったショックと、抱きすくめられたショックで。
「ホントに大丈夫?」
「あ、大丈夫だから……カバサワ、放してくれる?」
きっとカバサワも動転していたのだろう。まだあたしの腰に手をまわしていた。
「あ、ごめん……」
言いながら、まだあたしを放してくれない。