HEAVEN of JOKERS
「千「ねぇ、その子だれ?」
彼を呼ぼうとした私の声は、とても落ち着いた中性的な声にかき消された。
コツコツと靴音をたて、ヤンキーたちの背後からこちらに向かう音にあわせて軽い花道のようなものができる。
「……真白(ましろ)、」
そう呟いた千哉の声は少なからず動揺をしていた。
「……きたよ、呼ばれてないけどね」
ヤンキーたちが空けた道によりやっと声の主が確認できた。
真っ白な髪、真っ白な肌。
低めの背丈に、中性的な声。
色っぽい泣きぼくろ。
片耳に編み込みをしていて、首筋にそって細くなっていく毛先には色気さえ感じてしまう。
真白、と呼ばれた男の子は服装こそ男の子だけれど、でかい真っ白なうさぎのぬいぐるみを抱いては、締め付けている。
……あれ、男の子、だよね?
「キミ、今失礼なこと思ったよね?
僕、ちゃんと男の子だから」
そう放たれた声はやはり高くて、中毒性のある声だ。
「わ、かってる……」
「……ふん、それならいいんだけど?
それで、2人して、
なんて間抜けな格好してんの? 」
「間抜けって……」
確かにおぶわれてるけど、マヌケ?
「その前に、キミは誰?
千哉が自ら女の子引き込むわけないから、キミはどっからか侵入して襲うの失敗して骨折でもしたの?」
な、
「なんでそうなるの……」
侵入もしてないし襲ってもないしその時怪我したわけでもないし!!!
って、あれ?
「なんで、骨折って……」
そういうと、真白と呼ばれた彼はズタズタと私の方へきて、左足に手を添えた。
「ヒッ……」
「うるさい、痛くしないからじっとして」
なにかされるのかと思って、思わず声を出した。
ほんとは引っ込めたかったけど動かすこともできないくらい痛かった。
「なんでって、包帯グルグルにされてて、添え木までされてたら捻挫じゃなくて骨折でしょ?
ちょっとみるよ、じっとしててね」
みる?
みるってなにを?
はてなマークを浮かべる私をよそに、少年は千哉の不器用に巻かれた包帯をほどいていった。