ホテル王と偽りマリアージュ
『あ、でもね、椿さん!』
声のトーンを上げながら、お義母さんが私に急いたように言葉を続けていた。
『一哉に社長就任の条件として結婚を言い付けて、その相手を自由にさせたのは、自分で選んだ家族を幸せに大事にして欲しいって親心だったのよ。それで私たちは、一哉はあなたとなら幸せな家庭が築ける、そう確信してるの』
「え……」
どうしてそんなことを言い切れるんだろう。
その答えが欲しくて、私は戸惑った声を漏らしていた。
『夫婦喧嘩くらいどんどんしなさい。お互い言いたいこと我慢しないでぶつけ合ってる証拠じゃない。な~に。万が一本当に泥沼の喧嘩したら、椿さんは私を頼って。その時はいくらでも助太刀してあげる。一哉は親を大事にしてくれるいい息子だから』
『ねっ!』と明るく言われて、私はありきたりなお礼しか言えなかった。
静かに電話を切ってから、一度大きく肩で息をする。
お義母さんの言葉が、私の後ろめたさに拍車をかける。
一哉が自分で言っていた通り、彼は大事にしているご両親をも欺いている。
私にまで嘘をつかせていると言ったけど、それを承知で契約したのは私だ。
そんな私と一哉を、お義母さんは『幸せになれる』って言ってくれる。
言いたいことをぶつけ合った結果の夫婦喧嘩じゃない。
逆になにも伝えられないまま、溝を深めてぎこちなくなってしまっただけなのに――。
声のトーンを上げながら、お義母さんが私に急いたように言葉を続けていた。
『一哉に社長就任の条件として結婚を言い付けて、その相手を自由にさせたのは、自分で選んだ家族を幸せに大事にして欲しいって親心だったのよ。それで私たちは、一哉はあなたとなら幸せな家庭が築ける、そう確信してるの』
「え……」
どうしてそんなことを言い切れるんだろう。
その答えが欲しくて、私は戸惑った声を漏らしていた。
『夫婦喧嘩くらいどんどんしなさい。お互い言いたいこと我慢しないでぶつけ合ってる証拠じゃない。な~に。万が一本当に泥沼の喧嘩したら、椿さんは私を頼って。その時はいくらでも助太刀してあげる。一哉は親を大事にしてくれるいい息子だから』
『ねっ!』と明るく言われて、私はありきたりなお礼しか言えなかった。
静かに電話を切ってから、一度大きく肩で息をする。
お義母さんの言葉が、私の後ろめたさに拍車をかける。
一哉が自分で言っていた通り、彼は大事にしているご両親をも欺いている。
私にまで嘘をつかせていると言ったけど、それを承知で契約したのは私だ。
そんな私と一哉を、お義母さんは『幸せになれる』って言ってくれる。
言いたいことをぶつけ合った結果の夫婦喧嘩じゃない。
逆になにも伝えられないまま、溝を深めてぎこちなくなってしまっただけなのに――。