ホテル王と偽りマリアージュ
クリスマス間近の街は、どこもかしこも美しいイルミネーションが点灯していて、お店の装飾やショーウィンドウも彩りよくとても華やか。
クリスマスムード一色の中、通りを行き交う人々はみんなクリスマスの訪れを心待ちにしている様子。


私にとっては毎年それほど楽しみなイベントではなかったけれど、今年は私の胸もウキウキと弾んでいる。
その理由はもちろん一哉が隣にいるからだ。


柄にもなくはしゃぎ出したくなるのを抑えながら、私は隣を歩く一哉の横顔を窺い見た。
今年のクリスマスは私も彼と二人きりで過ごせるかな。
そんな幸せな恋人同士のクリスマスを期待してもいいかな。


いや、もしかしたら一哉はニューヨークに行ってしまうかもしれない。
でもお義父さんも連れて行ってもらえと言ってくれたし、一哉の邪魔にならないなら、一緒に行きたい。
ニューヨークでクリスマスか。素敵だろうなあ……。


ついゆらゆらとそんな妄想をしてしまうくらい、私は浮かれてる。
だって、考えてみたらクリスマスシーズンに彼がいたことがない。
聖夜を恋人と二人で過ごせるかも、と期待するのも、私は生まれて初めてだった。


なのに今私の隣には、通り過ぎる女性の誰もが振り返る、本物の王子様としか思えない素敵な人がいて、私を優しくエスコートしてくれる。
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