ホテル王と偽りマリアージュ
ケッセン
ホテルの部屋に戻り、ドアの鍵を閉めた途端、一哉が私にキスをした。
さっきまでの熱気がまだ身体の中で燻っている。
私も彼も自分の中の熱を放出しようとするように、ぎゅっと抱き合い、夢中で舌を絡め合った。


激しいキスに息が上がる。
私の方から唇を離しても一哉が逃がしてくれず、ただ乱れていくだけ。


キスの音が耳に木霊して聞こえて、恥ずかしくなる。
彼と交わした何回かのキスの中で、一番イヤらしい気がして、私の心臓がフル回転し始めた。


やがて、一哉も呼吸を乱しながら、キスから解放してくれた。
大きく胸を喘がせる私の肩に額をのせると、小さく掠れる声でボソッと耳元に囁く。


「椿。……シたい。いいよね?」


熱っぽく問い掛ける彼の声に、胸がドキンと大きく跳ねた。
そのままドキドキと加速し続ける鼓動は、きっと一哉に伝わっている。


胸が苦しい。
頭の中で血管が脈打つのもわかる。
熱を帯びた耳は、一哉にわかるくらい真っ赤に染まっているだろう。


私は思い切って小さく一度だけ頷いた。
意思表示にも、見えないかもしれない微かな返事。
一哉が見逃してくれるならそれでもいい。
もちろん、ちゃんと見止められても、構わない。


無言の小さな返事でも、一哉は見逃しはしなかった。
一度小さくクスッと笑うと、私の膝の裏に腕を回し、そのままヒョイッと担ぎ上げる。
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