ホテル王と偽りマリアージュ
一哉はベッドサイドに肘を置いたまま、顔の前で両手の指を組み合わせる。
『うん』と一言声に出して頷いた。
「あの人たちを見てると、俺は幸せ者だって思うよ」
「はは……。自画自賛?」
言い回しが違うか?と思いながら、私も一哉に同調した。
けれど、彼は静かに目を伏せる。
「いや……。その分、俺が親を不幸にするんだなって、自分が嫌になる。俺はアメリカのホテルの経営がやりたくて、ただ社長になる為だけに親を騙して、本来無関係の椿にまで嘘をつかせてる」
どこか思い詰めたような一哉の低いトーンの声に、私は無意識に上体を起こした。
それを見て、一哉が私の背中を支えながら『寝てろ』と止める。
「一哉……?」
「『家族』を不幸にする俺は、本当は社長になんかなっちゃいけないのかもしれない」
そう付け加えて、一哉はどこか弱々しく微笑む。
彼の言葉は、私の胸にもはっきり刻まれているものだった。
「一哉、要さんになにか言われたの?」
枕に頭を戻しながら訊ねると、一瞬虚を突かれたかのように、一哉が目を丸めた。
「要?」
私に聞き返す彼の瞳が、険しく細められる。
「あ、ううん! ごめん、なんでもない」
『うん』と一言声に出して頷いた。
「あの人たちを見てると、俺は幸せ者だって思うよ」
「はは……。自画自賛?」
言い回しが違うか?と思いながら、私も一哉に同調した。
けれど、彼は静かに目を伏せる。
「いや……。その分、俺が親を不幸にするんだなって、自分が嫌になる。俺はアメリカのホテルの経営がやりたくて、ただ社長になる為だけに親を騙して、本来無関係の椿にまで嘘をつかせてる」
どこか思い詰めたような一哉の低いトーンの声に、私は無意識に上体を起こした。
それを見て、一哉が私の背中を支えながら『寝てろ』と止める。
「一哉……?」
「『家族』を不幸にする俺は、本当は社長になんかなっちゃいけないのかもしれない」
そう付け加えて、一哉はどこか弱々しく微笑む。
彼の言葉は、私の胸にもはっきり刻まれているものだった。
「一哉、要さんになにか言われたの?」
枕に頭を戻しながら訊ねると、一瞬虚を突かれたかのように、一哉が目を丸めた。
「要?」
私に聞き返す彼の瞳が、険しく細められる。
「あ、ううん! ごめん、なんでもない」