「今日もすき。」
はじまりの前
3月
「春田さーん春田愛優菜(ハルタアユナ)さーん」
私は椅子から重い腰をあげて診察室へ向かう。慣れた後継、行動、病院の匂い。顔見知りの看護師さん。
「2週間ぶりだね。」
顔見知りの先生。
小学生の頃から通い続けてればこんなの当たり前でしょ。誰でも嫌でも慣れる。
「先生、愛優菜18歳になれた。」
少しだけ口角をあげて先生に言った。先生はすごく嬉しそうに、頷いてくれた。
でもその後私の嫌いな顔をして私の方を向く。
「愛優菜ちゃん。検査結果だけどね…」
あ…聞きたくない。私は全てをシャットダウンするかの様に、目を瞑って下を向く。
先生の声が少しずつ遠くなる。病院のアルコールの匂いが少しずつ消えていく。
ずっとこうやって乗り越えてた。逃げてた自分自身から。