この世界の中で生きていく為に私がすること。
だって…大学院で準教授なんじゃないの?
教える立場なのになんで講義を受けるの?
「はい…いいですけど、辰巳さんも講義受けるんですか?」
辰巳さんは手に持っていた本を本棚に戻すと、床に置いてあった鞄を持ち上げる。
「どういう風に講義をするか、参考にしたいんですよ。それに山本先生の講義も受けたいですからね」
そう言うと、辰巳さんは「行きましょう」と私に講義に行くように促す。
辰巳さんと並んで歩き出したが、なんだか横に並ぶのには抵抗を覚えてしまう。
先生と対等に並ぶというのは、恐れ多い。
私は先生や目上の人と歩く場合には一歩下がって歩くようにしている。