だから今夜も眠れない
はっと、息を飲んだ。

何故なら少し前まで気になってしかたのない人だったから。


スタッフの控え室だろうか、そこから私のことを凝視しているのは、

伯父さんの葬儀に行くまで頭の中を占めていた王子様だった。


きっと私はポカンとした顔をしていたはずだ。


彼はいらっとした表情になり、その場から姿を消した。


嘘……夢?

私の会いたい願望が彼のように見えただけなの?


♪~それはポケットの中の着信音で直ぐに否定された。


メ―ルなんて最近ではショップから来るクーポンつきの広告か、

迷惑メールか、親ぐらいなものだ。



会社からのものはすべてボックスに入るから、

直メは……ドキドキしながら取り出すと、

紛れもないあの人からのもので、

しかもこの間の形式ばったメールじゃなかった。


『なんで君がそこにいるの?』


それはこっちのセリフなんですが……


呆然とスマホの画面を見つめているうちに、


古めかしいブザーが鳴り響いた。
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