スーパーヤンキー!!
「…か…おじょ…ま……」
「………ん……?」
「龍花(りゅうか)お嬢様!大丈夫ですか?」
「……なんだ、桜さんじゃないか。どうしたんだ?こんな朝から」
「目を覚まされたのですね。良かった…」
「何言ってんだ?死人じゃあるまいし、目覚めるに決まってんじゃねぇか」
「そうですね…ですが、とてもうなされている様でしたので、心配しました…大丈夫ですか?」
目を開けると、そこには悲しそうに俺の顔を覗き込んでいる桜さんがいた。綺麗な黒髪をおだんごにして、誰もが振り返りそうな程の美貌を持つ女性。
またか…これで何度目だ?こんなに桜さんを心配させるのは俺くらいじゃないか?もっとしっかりしないといけねぇな。
「悪ぃ。ちっと悪夢を見ちまっただけだ。なぁに心配要らねぇよ。俺は大丈夫だ。なんて事ねぇからそんな顔すんなよ。な?」
俺がにっこり笑うと、桜さんはまだ心配そうな顔をしていたけど笑い返してくれた。本当に心配してくれてるんだなぁ。と心から思う。
「ったく、そんな綺麗な顔で見られちまったら惚れるだろうが。俺は桜さんの家族なんだから変な気起こさせないでくれよ。」
俺が冗談混じりに笑って言ってみせると、桜さんは今度こそ満面の笑みで言葉を返す。
「何をおっしゃっているんですか。龍花お嬢様は女の子ですよ。それに私は龍花お嬢様程、綺麗な方はおられないと思います」
「ハハッ、言ってくれるじゃねぇか。俺の負けだ。ああ、そうだ。今日から白蘭高校に通う事になったんだ。すまねぇが、この長ぇ髪を男らしく切っちゃくれねぇか?」
「かしこまりました。では少しお待ちください」
「おうよ。すまねぇな」
俺は桜さんが扉を閉めて歩き出すのを確認してから頭をガシガシと掻いた。そして大きなため息を一つ。
またかよ…クソ野郎が。いつまで引きずってやがる。いい加減立ち直らねぇと周りに迷惑がかかってんじゃねぇか。しっかりしやがれ。このアホ!
自分に喝を入れながら気を取り直す。
俺にはもう時間がねぇ。さっさと前に進まねぇと一生後悔することになる。それだけはもう勘弁だ。家族を傷つけられるのは自分が傷つくよりも痛い。もうその痛みを知っただろうが。後は自分で家族を守り抜くだけだ。まだ決着の日は遠い。
コンコンというノック音の後に「失礼致します」と言って、手にハサミを持った桜さんが入ってくる。
「普通に入ってきていいんだぞ?ほんとに桜さんは律儀だなぁ」
「これが私ですから。龍花お嬢様の前ではしっかりとしたメイドでありたいのですよ」
「だから、何度も言ってるだろ。桜さんはメイドじゃなくて家族だって」
「とても有難いお言葉です。龍花お嬢様はいつも私に親切にして下さいますね。私はそのお言葉だけでも生きていけます」
「何言ってやがる。当たりめぇの事だろうがよ。桜さんにはもっと幸せになってもらいてぇよ。俺は」
髪をジャキジャキと切りながら桜さんはとても嬉しそうに笑っている。鏡越しにでもはっきり分かるくらいに。
「はい…有難うございます」
お礼を言う桜さんは少し泣きそうな顔をして、鏡も見ずにハサミを動かし続ける。しばらくすると、
「こんな感じでいかがでしょうか?」
と、俺に問いかけた。
「おう。いいじゃねぇか。ありがとよ」
俺が満足気に言うと、桜さんも満足した顔をして、頭を下げて部屋を出て行った。俺は切ってもらった髪を鏡で見ながら深呼吸をする。そして自分の頬を両手でバシッと叩いて笑顔を作った。
「いっちょ気張ってきますか。……あ、やべ。朝食に遅れちまう。急がねぇと」
俺は真新しい制服の袖に自分の手を通し、昔母さんに頼んで貰った、母さんの写真に一礼して部屋を後にした。
「………ん……?」
「龍花(りゅうか)お嬢様!大丈夫ですか?」
「……なんだ、桜さんじゃないか。どうしたんだ?こんな朝から」
「目を覚まされたのですね。良かった…」
「何言ってんだ?死人じゃあるまいし、目覚めるに決まってんじゃねぇか」
「そうですね…ですが、とてもうなされている様でしたので、心配しました…大丈夫ですか?」
目を開けると、そこには悲しそうに俺の顔を覗き込んでいる桜さんがいた。綺麗な黒髪をおだんごにして、誰もが振り返りそうな程の美貌を持つ女性。
またか…これで何度目だ?こんなに桜さんを心配させるのは俺くらいじゃないか?もっとしっかりしないといけねぇな。
「悪ぃ。ちっと悪夢を見ちまっただけだ。なぁに心配要らねぇよ。俺は大丈夫だ。なんて事ねぇからそんな顔すんなよ。な?」
俺がにっこり笑うと、桜さんはまだ心配そうな顔をしていたけど笑い返してくれた。本当に心配してくれてるんだなぁ。と心から思う。
「ったく、そんな綺麗な顔で見られちまったら惚れるだろうが。俺は桜さんの家族なんだから変な気起こさせないでくれよ。」
俺が冗談混じりに笑って言ってみせると、桜さんは今度こそ満面の笑みで言葉を返す。
「何をおっしゃっているんですか。龍花お嬢様は女の子ですよ。それに私は龍花お嬢様程、綺麗な方はおられないと思います」
「ハハッ、言ってくれるじゃねぇか。俺の負けだ。ああ、そうだ。今日から白蘭高校に通う事になったんだ。すまねぇが、この長ぇ髪を男らしく切っちゃくれねぇか?」
「かしこまりました。では少しお待ちください」
「おうよ。すまねぇな」
俺は桜さんが扉を閉めて歩き出すのを確認してから頭をガシガシと掻いた。そして大きなため息を一つ。
またかよ…クソ野郎が。いつまで引きずってやがる。いい加減立ち直らねぇと周りに迷惑がかかってんじゃねぇか。しっかりしやがれ。このアホ!
自分に喝を入れながら気を取り直す。
俺にはもう時間がねぇ。さっさと前に進まねぇと一生後悔することになる。それだけはもう勘弁だ。家族を傷つけられるのは自分が傷つくよりも痛い。もうその痛みを知っただろうが。後は自分で家族を守り抜くだけだ。まだ決着の日は遠い。
コンコンというノック音の後に「失礼致します」と言って、手にハサミを持った桜さんが入ってくる。
「普通に入ってきていいんだぞ?ほんとに桜さんは律儀だなぁ」
「これが私ですから。龍花お嬢様の前ではしっかりとしたメイドでありたいのですよ」
「だから、何度も言ってるだろ。桜さんはメイドじゃなくて家族だって」
「とても有難いお言葉です。龍花お嬢様はいつも私に親切にして下さいますね。私はそのお言葉だけでも生きていけます」
「何言ってやがる。当たりめぇの事だろうがよ。桜さんにはもっと幸せになってもらいてぇよ。俺は」
髪をジャキジャキと切りながら桜さんはとても嬉しそうに笑っている。鏡越しにでもはっきり分かるくらいに。
「はい…有難うございます」
お礼を言う桜さんは少し泣きそうな顔をして、鏡も見ずにハサミを動かし続ける。しばらくすると、
「こんな感じでいかがでしょうか?」
と、俺に問いかけた。
「おう。いいじゃねぇか。ありがとよ」
俺が満足気に言うと、桜さんも満足した顔をして、頭を下げて部屋を出て行った。俺は切ってもらった髪を鏡で見ながら深呼吸をする。そして自分の頬を両手でバシッと叩いて笑顔を作った。
「いっちょ気張ってきますか。……あ、やべ。朝食に遅れちまう。急がねぇと」
俺は真新しい制服の袖に自分の手を通し、昔母さんに頼んで貰った、母さんの写真に一礼して部屋を後にした。