スーパーヤンキー!!
長い廊下を渡って声のする方へ進むと、何やら盛り上がっている声が聞こえてくる。


チッ。


ついつい舌打ちしてしまった。


またあのクソジジイ共騒ぎやがって。俺がどんだけ頭痛いと思ってんだ!どうせまた朝から酒飲んでんだろ!マジでうぜぇな!


ガヤガヤと騒がしい部屋の前に立ち、襖を開こうと手をあげた瞬間、


「龍花おねーちゃーん!!!!!!!!!!」


何人もの小さな子供達が勢いよく襖を開き、俺に抱きついてきた。


「ぐうぇぇ!」


我ながら情けない声を出してしまった。子供達は俺に抱きついたまま、ニコニコ笑っている。


「おう、龍花。てめぇ進藤の長女のくせになに情けねぇ声出してんだ」


襖の中にいる身内が俺に言った。その後から次々にうるさい声が聞こえてくる。


「ぎゃははは!その通りだぜ!」


「龍花ちゃんはほんと、強ぇのか弱ぇのか分かんねぇなぁー」


「いい加減そのガキ共にも慣れてやらねぇと」


うるせぇな!急に飛びつかれたら誰でもビックリすんだろうが!傍観者は黙ってろ!


そんな事を思いながら抱きついてきた子供達に向かって優しく声をかける。


「おうおう。俺の可愛い妹と弟達!おはよう!調子はどうだ??元気な奴は手を上げろ」


そう言うと、皆元気に手を挙げて、


「おはよう!龍花姉ちゃん!」


「おはよう!今日は何して遊ぶ?」


「元気だよ!龍花姉ちゃんは??」


と、口々に言ってくる。


この子供達は俺がいろんな場所にある養護施設から引き取った子供達だ。皆最初は心を開いてくれず、話しかけるだけでも苦労したもんだ。だから俺はまず、幼稚園生から高校生までが通える学校を自分の金で建てた。


その金は"裏の仕事"で稼いだ。自分で。自分1人で。もう俺は1人でも"裏の仕事"を完璧にこなせるようになった。何の迷いも無く。何の感情も無く。


俺の家は極道だ。まだ建てられたばかりであまり知られてはいないが、"裏"じゃ聞いたことのない奴はいないくらいには有名になっちまった。おかげでいろんなヤクザやら不良達から目をつけられてる。そういう奴らは十中八九俺達を潰せば"裏"で名が広まると思ってるんだろうよ。まあ、間違っちゃいないがな。


そういう訳で俺は、やばい仕事をしたりすることが少なくねぇ。むしろ"裏の仕事"にやばくないもんはなかなかありゃしない。ま、おかげで俺は大金を稼がせてもらってる。


そんなこんなで遂には学校まで建てちまった訳だが、引き取った人数もそんなに多くない。だいたい100人位だ。建てた場所は俺の土地だから何の問題も無い。まあ元々は親父の土地だったが、俺はその土地の10分の1くらいもらった。親父もお人好しでそこら辺のゴロツキをヤクザに引き入れて家族にしちまうくらいだから、快く譲ってくれた。つまり俺の土地だ。


学校というからには勉強道具やら給食やら教師やら、必要なもんが沢山ありすぎで苦労したが、金さえあれば問題なんかなかった。


そうして今ではこの懐かれようだ。可愛がって育てるのは俺にとっちゃ楽勝だった。むしろ家族が増えて喜んでるくらいだ。俺は "家族だけは"大切にするからな。


血の繋がった弟も一人だけいる。そいつももちろん可愛くて可愛くて、つい甘やかしちまう。まああいつは甘やかしても我儘を言わない奴だからちょっと心配なんだよなぁ。


まあこういう経緯だ。俺は子供達一人一人の頭を優しく撫で、離れてくれるのを待って部屋に足を踏み入れた。
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