スーパーヤンキー!!

部屋を見渡すと、だだっ広い部屋(畳200畳程)の中心に特注のかなり長いテーブルが二つ。そしてその周りには刺青だらけのヤクザやら養護施設の子供達やらが隙間なく座っている。子供達は、6歳の子から18歳の子まで様々だ。


全員ギャアギャアと喚いている。耳を塞ぎたくなるようなうるささに頭痛が悪化しそうだ。その中のヤクザ数人が子供達に囲まれている俺を見て笑っている。


それを見て俺は素直に平和だなと思う。普段"裏"で働いている奴らとは思えない。刺青と強面とゴツい体以外は。


｢おい、いつまで突っ立ってやがる。さっさとここに腰下ろせや。全員てめぇを待ってんだ｣


声のした方角に目をやると、丁度長いテーブルの中心辺りに座っている、俺とそっくりな顔をした奴がこちらを見ている。そいつは、さっき一番初めに俺に声をかけてきた身内だ。やっぱ俺にそっくりだと思う。いや、俺がそいつに似ちまったんだ。


｢うるせぇよ。親父。いや、クソジジイ！言われなくても座るんだよ｣


｢言うようになったじゃねぇか。ほれ、さっさと優真の隣に座れ｣


｢早く座んねぇと、龍己(たつみ)さんが怒って殴りかかっちまうぞー｣


｢おい、俺は純粋なガキの前で暴れるほど気の弱ぇ奴になった覚えはねぇぞ｣


親父は自分の隣に座っている優真(ゆうま)の頭を優しく撫でながら言った。そう。優真は俺の血の繋がった弟だ。ほんとに可愛い。誰に似たんだか……


優真はまだ8歳だが、しっかりしてて物分りが良くて、何より親父と俺を尊敬してくれている。いつかはこの進藤家の組長になる子だ。だから俺と親父は優真を立派な組長にする為、毎日忙しく勤しんでいる。まあ、さすがにまだドロドロしたような仕事は教えられねぇが。


優真は俺を見てにっこり笑いながら手招きする。多分この騒音の中じゃ俺まで声が届かないと思ったんだろう。


俺が優真の方に行くと、子供達は親父の方に走っていった。親父は子供達全員の頭を優しく撫でながら、｢お前らも早く座んな｣と笑顔で言っているようだ。ほんとに俺も親父も家族には緩いんだよなぁ。特に未来のある小さい子達には道を間違えられちゃ困るからなぁ。


｢はーい！｣


元気良く返事をして座る子供達や部屋の中にいるヤクザ共や学生達を見て、ほんとに沢山家族がいたもんだなぁと、改めて思う。そして同時に幸せだなぁとも感じる。


そんな俺を見ていたのか、部屋の中にいるヤクザ共が、


｢なぁに、しんみりした顔してんだァ？｣


｢ほんっとにうちのお嬢は泣き虫でいけねぇや｣


｢どうせまた俺らの事見て感動してたんだろうよ｣


｢ぎゃははは！言えてらぁ！｣


｢いざ喧嘩とか仕事になるとかっけぇのによォ｣


と、俺の心を見透かした様に言ってくる。俺は少し恥ずかしくなって思いっきり叫んでやる。


｢うるせぇよ！ごちゃごちゃ言ってっとお茶ぶっかけんぞ！｣


｢おおっと！怒らせちまったかー？｣


｢そうみてぇだな！｣


口々に言いながらも、皆の顔は満面の笑顔だ。普段怖い顔したヤクザ共が笑っていると、本当に幸せだと思っていてくれる事が伝わってくる。そして俺は、それを見てまた安心してしまう。ほんとに仲が良い。


それから俺は、優真の隣でヤクザ共と言い争ったり、学生達の話を聞いたりして和気あいあいと朝食を済ませた。