ADULTY CHILD
「突然お邪魔してすんません、俺、結城俊って言います。
犬塚から聞いて来ました」
短く刈られた頭髪は茶、というよりは金色に近く輝き、両耳には幾つもピアスが光っている。
しかし、そんな見た目とは違ってどうやらこの人は礼儀正しい様だ。
いや、そんな事に感心している場合ではない。
記憶喪失だと思っていたぎんがこの人を知っていた、そちらの方が今は重大だった。
「…驚いたみたいっすね。
俺も正直ビックリしたんすよ。
雅也から大体の事は聞いてたんすけど…
やっぱあいつ凄ぇな〜、マジで医者になりゃ良かったのに」
結城俊と名乗った男の言葉がイマイチ理解出来ないでいた桜は、独り言の様に呟いた彼の言葉の続きを黙って待った。
「あ、料理中みたいっすね。
ってか、焦げた匂いするし…
もしかして料理苦手だったりします?」
「え、あ、あのっ」
桜の横をすり抜けてキッチンへ立った俊が大袈裟に手を広げる。
「あ〜あ、本なんか広げながら料理なんてしちゃ駄目っすよ。
よっしゃ!
んじゃ姉さんは銀の相手でもしてて下さい」
「えぇっ⁉︎」
「あ、大丈夫、慣れてるんで」
そう言って手際良く調理の続きに取り掛かった彼に私は開いた口が塞がらなかった。
「いっただっきま〜す!
…美味しい〜!
しゅん兄ちゃんありがと〜!」
「おーそうかそうか、いっぱい食えよ?」
「うんっ!」
目の前には美味しそうなハンバーグが鎮座している。
手際良く短時間で作られた料理の前で、桜は本当の兄弟の様な2人に呆気に取られていた。
「あ、姉さんもどうぞ」
2人を交互に見るだけで、料理に手を付けない桜に気付いた俊がにこやかに笑う。
「はぁ…」
「あー、食いながらでいいんで…
さっきからずっと、何で銀の奴が俺の事覚えてたのか不思議に思ってたと思うんで、簡単に説明しますね」
「あ、はい…」
もう昼食は済ませてきたのだろうか、美味しそうに食べているぎんに顔を綻ばせながら、俊がそう切り出した。
「俺、こいつとは幼馴染みなんすよ。
それこそ生まれた時から一緒っつー位。
こいつの方が1つ年上なんすけど、物心つく前から一緒に遊んだりしてて」
昔の事を思い出しているのか、俊の目がふっと遠くへ飛ぶ。
「さっき雅也がうちに来て、んで、銀の事頼まれたんす。
銀の奴が記憶喪失になったかもしれない。
でも、もしかしたら記憶喪失じゃなくて幼児退行かもしれないから、それなら俊の事は分かる筈だから行ってみてくれって。
あいつ、バイトの時間ギリギリだったんで滅茶苦茶急いでましたけど、ここの住所も教えてくれて」
彼の言葉から、雅也が急いでいたにも関わらずそこまで気を回していた事を知り桜は頭を下げる思いだった。
犬塚から聞いて来ました」
短く刈られた頭髪は茶、というよりは金色に近く輝き、両耳には幾つもピアスが光っている。
しかし、そんな見た目とは違ってどうやらこの人は礼儀正しい様だ。
いや、そんな事に感心している場合ではない。
記憶喪失だと思っていたぎんがこの人を知っていた、そちらの方が今は重大だった。
「…驚いたみたいっすね。
俺も正直ビックリしたんすよ。
雅也から大体の事は聞いてたんすけど…
やっぱあいつ凄ぇな〜、マジで医者になりゃ良かったのに」
結城俊と名乗った男の言葉がイマイチ理解出来ないでいた桜は、独り言の様に呟いた彼の言葉の続きを黙って待った。
「あ、料理中みたいっすね。
ってか、焦げた匂いするし…
もしかして料理苦手だったりします?」
「え、あ、あのっ」
桜の横をすり抜けてキッチンへ立った俊が大袈裟に手を広げる。
「あ〜あ、本なんか広げながら料理なんてしちゃ駄目っすよ。
よっしゃ!
んじゃ姉さんは銀の相手でもしてて下さい」
「えぇっ⁉︎」
「あ、大丈夫、慣れてるんで」
そう言って手際良く調理の続きに取り掛かった彼に私は開いた口が塞がらなかった。
「いっただっきま〜す!
…美味しい〜!
しゅん兄ちゃんありがと〜!」
「おーそうかそうか、いっぱい食えよ?」
「うんっ!」
目の前には美味しそうなハンバーグが鎮座している。
手際良く短時間で作られた料理の前で、桜は本当の兄弟の様な2人に呆気に取られていた。
「あ、姉さんもどうぞ」
2人を交互に見るだけで、料理に手を付けない桜に気付いた俊がにこやかに笑う。
「はぁ…」
「あー、食いながらでいいんで…
さっきからずっと、何で銀の奴が俺の事覚えてたのか不思議に思ってたと思うんで、簡単に説明しますね」
「あ、はい…」
もう昼食は済ませてきたのだろうか、美味しそうに食べているぎんに顔を綻ばせながら、俊がそう切り出した。
「俺、こいつとは幼馴染みなんすよ。
それこそ生まれた時から一緒っつー位。
こいつの方が1つ年上なんすけど、物心つく前から一緒に遊んだりしてて」
昔の事を思い出しているのか、俊の目がふっと遠くへ飛ぶ。
「さっき雅也がうちに来て、んで、銀の事頼まれたんす。
銀の奴が記憶喪失になったかもしれない。
でも、もしかしたら記憶喪失じゃなくて幼児退行かもしれないから、それなら俊の事は分かる筈だから行ってみてくれって。
あいつ、バイトの時間ギリギリだったんで滅茶苦茶急いでましたけど、ここの住所も教えてくれて」
彼の言葉から、雅也が急いでいたにも関わらずそこまで気を回していた事を知り桜は頭を下げる思いだった。