ADULTY CHILD
「はぁ、はぁ…っ…」
何とか自室まで男を運んだものの、流石にベッドまで引き摺る事は出来ない。
ソファーに彼女ごと倒れ込んだ男の苦しそうな息遣いが首に掛かる。
男の体重に押し潰されそうになりながら何とか這い出ると、暗闇を壁伝いに進み部屋の明かりを点けた。
男はうつ伏せの状態でソファーから今にも落ちてしまいそうな姿だ。
肩で呼吸している様子が見て取れる。
取り敢えず自分の部屋まで運んでしまったが、救急車でも呼んだ方が良かったのかもしれない。
そう思って男の傍に膝を着くと、意識があるのかハッキリしない男に向かって呼び掛けた。
「あの…聞こえてますか?
今救急車を呼びますから、お名前教えて貰えます?」
「はぁ…はぁ…」
「もしもし?
名前ですよ、名前!」
「…名前…?」
「そう、貴方の名前教えて下さい。
救急車呼びますから、貴方の名前と住所と…あと、家族か、誰か知り合いの方の連絡先も教えて下さい」
「はぁ…っ…名前…家族…」
高熱のせいで朦朧としているのか、男は彼女の言葉を復唱するばかりで問い掛けに答えない。
このままではもし救急車を呼んだとしても、どんな関係なのか尋ねられて困るだけだ。
発見時にその場で何故119番しなかったのか、と今更ながらに彼女は悔いた。
「困ったな…
取り敢えずコートとか雪で濡れちゃってるし、着替えさせないと…」
ふと思い出して今更ながらにエアコンを点けた彼女は、寝室のクローゼットから大きめのスラックスを出して男の所へ戻った。
大体身長は170オーバー位だろうか?
少し小さいだろうがこれ以上大きい服は持ち合わせていない。
緊急事態だ、多少は我慢して貰おう。
「着替えないと余計にこじらせちゃいますよ。
肺炎とか起こしたら大変ですから着替えて下さい。
服、ここに置いておきますからね」
顔を伏せたままの男の脇に持ってきたスラックスを置くと、自分も濡れ鼠だったのを思い出して再び寝室へ向かう。
水分を含んで重くなったコートを脱いでハンガーに掛け、部屋着に着替えながら、彼女はこの非現実的な状況に大きく溜め息を吐いた。
一体何がどうしてこんな事になってしまったのか。
ともかく、とっとと名前を聞き出して、後の事は救急に任せよう。
赤の他人に出来る事はそれだけだ。
「はぁ…はぁ…」
リビングに戻ると男は先程と同じ状態で、何とかコートだけは脱いだらしく床に投げ捨てられていた。
よほど辛いらしい。
自力で着替えるのは無理か…
「ゴホッ!
ゴホゴホッ!」
咳き込み始めた男には聞こえない様に大きく息を吐いて、彼女は浴室からタオルを何枚か持ってくるとソファーの横に腰掛けた。
成り行きとはいえ、ここまで運んでしまったのだ。
どうせならとことん看病してやろうではないか。
何とか自室まで男を運んだものの、流石にベッドまで引き摺る事は出来ない。
ソファーに彼女ごと倒れ込んだ男の苦しそうな息遣いが首に掛かる。
男の体重に押し潰されそうになりながら何とか這い出ると、暗闇を壁伝いに進み部屋の明かりを点けた。
男はうつ伏せの状態でソファーから今にも落ちてしまいそうな姿だ。
肩で呼吸している様子が見て取れる。
取り敢えず自分の部屋まで運んでしまったが、救急車でも呼んだ方が良かったのかもしれない。
そう思って男の傍に膝を着くと、意識があるのかハッキリしない男に向かって呼び掛けた。
「あの…聞こえてますか?
今救急車を呼びますから、お名前教えて貰えます?」
「はぁ…はぁ…」
「もしもし?
名前ですよ、名前!」
「…名前…?」
「そう、貴方の名前教えて下さい。
救急車呼びますから、貴方の名前と住所と…あと、家族か、誰か知り合いの方の連絡先も教えて下さい」
「はぁ…っ…名前…家族…」
高熱のせいで朦朧としているのか、男は彼女の言葉を復唱するばかりで問い掛けに答えない。
このままではもし救急車を呼んだとしても、どんな関係なのか尋ねられて困るだけだ。
発見時にその場で何故119番しなかったのか、と今更ながらに彼女は悔いた。
「困ったな…
取り敢えずコートとか雪で濡れちゃってるし、着替えさせないと…」
ふと思い出して今更ながらにエアコンを点けた彼女は、寝室のクローゼットから大きめのスラックスを出して男の所へ戻った。
大体身長は170オーバー位だろうか?
少し小さいだろうがこれ以上大きい服は持ち合わせていない。
緊急事態だ、多少は我慢して貰おう。
「着替えないと余計にこじらせちゃいますよ。
肺炎とか起こしたら大変ですから着替えて下さい。
服、ここに置いておきますからね」
顔を伏せたままの男の脇に持ってきたスラックスを置くと、自分も濡れ鼠だったのを思い出して再び寝室へ向かう。
水分を含んで重くなったコートを脱いでハンガーに掛け、部屋着に着替えながら、彼女はこの非現実的な状況に大きく溜め息を吐いた。
一体何がどうしてこんな事になってしまったのか。
ともかく、とっとと名前を聞き出して、後の事は救急に任せよう。
赤の他人に出来る事はそれだけだ。
「はぁ…はぁ…」
リビングに戻ると男は先程と同じ状態で、何とかコートだけは脱いだらしく床に投げ捨てられていた。
よほど辛いらしい。
自力で着替えるのは無理か…
「ゴホッ!
ゴホゴホッ!」
咳き込み始めた男には聞こえない様に大きく息を吐いて、彼女は浴室からタオルを何枚か持ってくるとソファーの横に腰掛けた。
成り行きとはいえ、ここまで運んでしまったのだ。
どうせならとことん看病してやろうではないか。