ADULTY CHILD
「…眩し…」

窓から零れる朝の日差しに目を覚ます。
睡眠が足りずショボショボする目を擦りながら、桜は重い身体を起こした。
目の前には昨夜気紛れで助けてしまった男が、ソファーでまだ気持ち良さそうに眠っていた。

「もう朝…?
全然寝た気がしない…」

動かす度に所々身体が軋む。
自分よりもはるかに図体の大きい男をゴミ置き場から運んだり、壁にもたれて眠ってしまった男を再度ソファーに運んだりしたせいで、あちこちが筋肉痛という名の悲鳴を上げていた。

「すぅ…すぅ…」

それにしても…昨夜はドタバタしていたし、夜という事もあって定かでは無かったが…

「睫毛長ーい…
綺麗な顔…女の人より断然…
まるで、ルーブル美術館からそのまま出てきたみたい…」

朝の日差しが男の顔をより一層美しく引き立てる。

「本当に綺麗…」

思わず男の頬に触れてしまった時、穏やかに閉じられていた瞳がゆっくりと姿を現した。

「…?」

「あっ…」

何故手を伸ばしてしまったりしたのか。

何かに引き寄せられる様に手が勝手に動いて、男の眠りを妨げてしまった事に言いようの無い罪悪感を感じて慌てて手を引っ込める。

「ご、ごめんなさい、起こすつもりじゃ…」

不思議そうな目を向ける男に、カッと顔が熱くなった。
そんな桜の様子に男が微笑んで…

「おはよ、ママぁ!」

言うなり抱きついてきた男に、桜は目を白黒させた。

「マ、ママぁ!?
あの、何の冗談っ!?」

無理矢理男の身体を引き剥がす。

「ママぁ…?」

その行為に悲しそうな顔をした男の目は真剣そのもの、純真な子供の様な、無垢な光を湛えていた。

一体これは何が起きているというのか!?

余りの衝撃に身動き出来ない桜は、何も考えられず暫くの間放心状態だった。
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