言えなかったありがとうを、今、伝えます。
prologue✩⋆。˚
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2011年8月某日。
俺、星野春馬は、祖母が所有する山にカブト取りに来ていた。双子の兄、天馬も一緒だ。
「今日はでっけぇカブト取れるかなぁ?」
「昨日もでっけぇのいたのに天馬が騒ぐから逃げたんだろー?」
「そうだっけー?」
ワーワーと言い合いながら、山道を進んでいく。
そこそこ大きな杉の木を見つけ、近づいてみてみるも、カブトはいなかった。
杉の木の横を通り過ぎ、しばらくいったときだった。
「そこ、崩れかけてて危ないよ。」
え?今なんか聞こえたような…
「今何か言った?」
「え?何も言ってねぇけど。」
「あれ…?空耳かな?」
そう思って、気にしなかった。
そのとき。
「こっち。」
と、さっきの大きな杉の木のほうから声がした。
今度は、はっきりと。
杉の木のほうを振り返ると、黒髪の女の子が立っていた。
その途端、振り返ったときの振動で、元々崩れかけてた崖が一気に崩れ落ちた。
俺に忠告した子と天馬が息を呑んだのが分かった。
「っわ!」
身体が宙を舞う。
数十メートル下には、流れの速い川がある。
「春馬っ!」
天馬の手を掴もうと手を伸ばしたが、その手は虚しく空を仰いだだけだった。
どんどん天馬が小さくなっていく。
もうだめだと思ったそのときだった。
さっき俺に忠告をした女の子が、躊躇いなく崖から飛び降り、俺に抱きついたのだ。
こ、この子は…
彼女の長い黒髪が頬を撫でる。
そこで、俺の記憶は弾けた。
2011年8月某日。
俺、星野春馬は、祖母が所有する山にカブト取りに来ていた。双子の兄、天馬も一緒だ。
「今日はでっけぇカブト取れるかなぁ?」
「昨日もでっけぇのいたのに天馬が騒ぐから逃げたんだろー?」
「そうだっけー?」
ワーワーと言い合いながら、山道を進んでいく。
そこそこ大きな杉の木を見つけ、近づいてみてみるも、カブトはいなかった。
杉の木の横を通り過ぎ、しばらくいったときだった。
「そこ、崩れかけてて危ないよ。」
え?今なんか聞こえたような…
「今何か言った?」
「え?何も言ってねぇけど。」
「あれ…?空耳かな?」
そう思って、気にしなかった。
そのとき。
「こっち。」
と、さっきの大きな杉の木のほうから声がした。
今度は、はっきりと。
杉の木のほうを振り返ると、黒髪の女の子が立っていた。
その途端、振り返ったときの振動で、元々崩れかけてた崖が一気に崩れ落ちた。
俺に忠告した子と天馬が息を呑んだのが分かった。
「っわ!」
身体が宙を舞う。
数十メートル下には、流れの速い川がある。
「春馬っ!」
天馬の手を掴もうと手を伸ばしたが、その手は虚しく空を仰いだだけだった。
どんどん天馬が小さくなっていく。
もうだめだと思ったそのときだった。
さっき俺に忠告をした女の子が、躊躇いなく崖から飛び降り、俺に抱きついたのだ。
こ、この子は…
彼女の長い黒髪が頬を撫でる。
そこで、俺の記憶は弾けた。