女の子として見てください!
「俺は、本当の自分を隠して、もう恋愛なんかしないとかって思ってた。
だけど、初めて会った時のお前は、素の自分をさらけ出すことでいつも相手にフラれるって言っていて。
お前はフラれたばかりで嘆いていたけど、俺にはなんかカッコよく見えたな。
そして、素敵な子だなって。

……こういう子と、恋ができたらいいなって」


……ウソ……。

あの時、私のことそんなふうに思ってくれていたの……?



「でも、連絡先を交換したあとで、俺に恋愛はやっぱムリかなとも思った。そのうえ、同じ職場だし。これはもう完全にムリだなって思ったよ」

「じゃあ、翔さんが私のこと拒否していたのは……」

「……自分に自信がなかったから。本当は、付き合いたいと思ってた。だけど、俺は、こんなふうに弱くて、男らしくないから。守って、あげられないから。
遊園地の時も、ごめん。あの時は血はなかったけど、ユキが人質になった五年前の事件と少し似ていたから、あれを思い出して、本当は少し、震えてた。人質のお前自身が平気そうだったから、笑ってごまかしてしまったけど……。
だからお前は、俺なんかよりもっといい男を見つけて、そいつのことを好きになった方がいい」


ああ、そうか。

私。


なんて言ってあげたらいいか、なんて考えなくてもいいんじゃないの?

思ったことを思うままに言えばいいんだよね?


だって……



翔さんは最初から、”ありのままでいい”って言ってくれていた。その言葉の意味を、重さを、今、強く感じ取ることができたから。


だから。



「翔さん。ひとつ質問してもいいですか?」

「いいよ。なに?」

「なんで、男だからって男らしくないといけないんですか?」


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