女の子として見てください!
「ここじゃあれだし。あっち行くか」

翔さんはそう言って、私の右手をギュッと握ってくれる。
あっち、というのはベッド……だよね。このあと心臓壊れちゃうんじゃないかなって思うくらい、すでに激しい。


でも私は、ベッドに行く前に、翔さんに聞いておきたいことがあった。

「あ、の。翔さん」

絞りだすような声で私が名前を呼ぶと、翔さんは「ん?」とやさしい表情、声色で聞き返してくれる。


そして。

「あの……私、その、初めてじゃないですか」

「うん」

「初めてって、血が結構出るって聞いたんですけど、翔さん倒れないですか?」


――バシン。

「痛い」

まじめに質問したつもりだったけど、翔さんからは頭にチョップをくらった。


「お前。俺のことバカにしてるだろ、絶対」

「し、してないです!」

「倒れるわけないだろ。それに……」

「それに?」

「……初めて、っていうのは、美桜にとっての一大事であるんだから、俺の心配なんかしなくていい……」

そう話す翔さんは、大きな右手で口元を隠していて。
でも、耳が赤くなっているのをたしかに見た。

照れ、てる?


「翔さん」

「……ん?」

「好きです。えへ」

なんだか急にリラックスできて。
もちろん、緊張はしてるんだけど。
翔さんはスマートなだけじゃないのかなとも思えて。

心臓は相変わらずバクバク激しく動いてる。
でも、不安はなくなっている気がする。


そんな私の様子を確認すると、翔さんはフッとやわらかく笑った。


そして、ふたりで寝室へと向かおうとした、その時――……。


ハラリ。


「「あ」」

私と翔さんの声が重なる。

私の身体を巻いていたタオルが、ひらりと外れてしまったからだ。
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