女の子として見てください!
ドレスを選ぶ時に一目で気に入った、純白のプリンセスラインのウェディングドレスを着て、隣では翔さんが黒のタキシードに身を包んでいる。

とはいえ。
堅苦しいのや気恥ずかしいのは私も翔さんもニガテだから、身内と親しい人だけを呼んで、気兼ねないくだけた披露宴を行なっているのだった。


去年、私より一足先に結婚した飯尾君は、つい最近子どもも産まれ、今は立派なパパだ。……そうは思えないくらい、性格は相変わらず天然で、不安になることもあるんだけど。今も、彼はシャンパングラスを片手にほろ酔い状態だ。


「でもまあ、幸せそうで良かった」

飯尾君の隣で、私たちにそう言ってくれたのは、課長だ。

課長も飯尾君と同じくシャンパングラスを片手に、だけど特に酔っている様子はなく、こう言ってくれる。

「最初は松城の片想いで終わるんじゃないかと思ったけど、ふたりとも、なかなかお似合いだと思うぞ」

そう言われ、私はキュンとうれしくなる。

思わず、口を緩めながら隣にいる翔さんをチラッと見つめると、翔さんも私を見つめてくれる。そして、フフッと笑い合った。



披露宴は続いていく。

やがて、会場の電気がフッと消えて、薄暗くなる。
恥ずかしいからあんまりやりたくないと思っていたけど、式の担当の方から『定番ですのでぜひ』と言われてやることになったスライドショーが始まる。

幼少時代の私の写真が流れると、さっきの飯尾君以上に酔っ払った私のお父さんが、「この頃はほんとに天使みたいにかわいくてね! 数年後、まさかゴリラみたいな女になるとは思わなかったんですけど!」と大きな声で言いだし、結構イラッとした。会場は笑いに包まれたからいいけど。


みんながスライドショーに注目してるの、やっぱりなんだか恥ずかしい。
私も見るべきなんだろうけど、恥ずかしいし、すでに何回も見てるし。

だから私は、さっきみたいにチラ、と翔さんの方を見て。


「翔さん」

小声で、彼の名前を呼んだ。

「なに?」と、彼がやさしく聞き返してくれる。


「私を……


私を、お嫁さんにしてくれてありがとう」
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