女の子として見てください!
「いっただきまーす!」
三月二十九日。
仕事が終わった後、俺は美桜と一緒に焼き肉を食べにきた。
一応、食べ放題じゃなくてもっとお高めの焼き肉店だけど。値段は気にせずに食べ放題だと思って食えと伝えた。
カルビ、ハラミ、レバー、その他、全種類の肉を食い尽くすんじゃないかという勢いで、焼いた肉たちが片っ端から美桜の胃袋へと消えていく。
俺はもともと少食なので、すぐに満腹になり、あとはひたすら美桜を見守った。
おいしい、おいしいと言いながら肉を食べていく美桜はさっきからずっと笑顔で楽しそうだ。
良かった。俺はこの笑顔が見たかったから。
やっぱり、俺の価値観なんて押しつけなくて良かった。
……とは思うけど。
「翔さん! ごちそうさまでした!」
店を出て、満足げにお腹をさすりながらめいっぱいの笑顔で美桜がそう言う。
かわいいな、なんて思いながらも、俺は照れ隠しに「はいはい」とだけ答える。
手をつないで、駅までの道を歩く。
まだそう遅くない時間なのに、裏通りを歩いているせいか、辺りに人は誰もいない。
もうすぐ、人通りの多い明るい道へと出る。
そこにたどり着く前に、俺はピタ、と足を止めた。
美桜も、不思議そうな顔で、俺と同じようにその場に立ち止まった。
ーー美桜の誕生日なんだから、俺の価値観を押しつけたらダメだ。そんなことはわかってる。
わかってるけど。
やっぱり。
「ちゃんと形に残るプレゼント、渡したくて」
サラ、と俺は美桜の髪を撫でた。
そして、バッグの中からプレゼント用に包装してもらっていた長方形のプレゼントを取り出し、美桜に渡した。