女の子として見てください!
「とにかく。変なウワサが立つと俺も君も迷惑だろ。あの夜バーで出会ったことは誰にも内緒にしよう。あと、くれぐれも俺のことを名前で呼ばないでくれ」

そんなことを言う時だけ、私の目をまっすぐに見つめてくる。
そこまでハッキリとそう言われてしまうと、さすがの私も

「はい……」

と答えるしかなかった……。



その後は、お互いにほぼ無言のまま昼食を終え、食堂を出た。


ありのままでいいと言われたけど、だからといって私に恋愛感情があるわけじゃなかった。

今まで、自分のことをごまかしてまで恋愛しても意味ないって思ってた。

だけど。

翔さんのことは、もう好きになっちゃったから。そんな簡単には諦められない。


だから。

ありのままの私で恋愛対象になれないのなら、やっぱり自分を偽ることも必要なんじゃないかって思って。



「ちょっと女らしくしようかな……」

午後、近頃多発している窃盗のパトロールのために飯尾くんと市内を歩きながら、私はボソッとそう呟いた。

生まれて初めて、自分を偽って恋愛しようと思い始めた。
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