女の子として見てください!
「えー? なに言ってるんですか。女らしい美桜さんなんて、美桜さんじゃないですよ!」

私の真剣な悩みを簡単に無下にするかのように、彼はいつもの天然の笑顔でそう言ってみせた。
こいつ、私のことをなんだと思ってるんだ。また泣かされたいのか。


でも、決意は大事だよね。
うん、これからは世間一般的な女らしくーー…



「キャーッ! 窃盗よー!」

商店街方から、女性の大きな声が聞こえてきた。

声の聞こえてきた方向へ目を向けると、ヘルメットをかぶった男が脇に女性もののハンドバッグを抱えて、駐輪場の方へ走っていく。

このままバイクで逃げる気なのかもしれない。


私はすぐにその場から駆け出し、そいつのことを追いかけた。


足には自信がある。このまま走っても追いつけるかもしれない。

だけど、確実に捕まえるために。

私は商店街の裏の土塀をよじのぼり、割と高さのあるそこから飛び降りた。

飛び降りると同時に、窃盗犯と対面した。駐輪場に行くには、この道を通らないといけないから。先回り成功だ。


「くそっ、飛び降りてくるから警察かと思ったら、なんだお前! ジャマだからそこどけ!」

あら。どうやら私のことを刑事だとは思ってないらしい。まあ、制服とかじゃなくてスーツだし、外見から私のことを刑事だとは誰も思わないだろう。

そんなことを考えていたら、窃盗犯が私に向かって突進してくる。


私は窃盗犯の腕を掴み、その場で背負い投げを決めた。
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