女の子として見てください!
なんて、落ちこんでいると。

「お手柄だったな」

頭上から、翔さんの声が聞こえた。
私はガバッ!と勢いよく顔を上げた。

すると、「ほら、奢りだ」と言って、翔さんが私に缶コーヒーを手渡してくれた。
あったかい……。


「あ、ありがとうございます……」

「なんでそんなに落ち込んでるんだ。もしかして、ケガでもしたのか?」


う、うう。やっぱりかっこいい。顔も、声も、全部!

……それに、バーで出会った時よりはそっけないとはいえ、やっぱり、やさしいと思う……。
コーヒーくれたし、ケガしてないかって心配してくれたのも、翔さんだけだ。

なんでそんなにそっけない態度なのかは、わからない。
だけど、どうしてもその奥にあるやさしさを感じてしまう。



「ケガしてないなら、早めに調書仕上げろよ」

翔さんはそう言って、捜査部室からさっと出ていった。
もの寂しいような気分になる。
だって、もっと話していたかった。


ガマンはニガテだ。
私はガタン!と勢いよく席を立ち、廊下に飛び出て、「かけ……伊浅さん!」と彼を呼び止めた。


「なに?」

と、翔さんは足を止め、私に振り返る。


辺りを見回すけど、ほかに人の気配はない。
話をするなら、今がチャンスだと思う。


でも、えーと。なにを話せばいいんだろ。
話したいことがまとまってもいないのにとりあえず体が動いてしまった。昔からの悪いクセだ。
< 22 / 155 >

この作品をシェア

pagetop