女の子として見てください!
そして、約束の土曜日。

私は二十時に、駅前で翔さんと待ち合わせしていた。

私が駅に到着すると、翔さんは改札前ですでに待っててくれていた。


「お待たせしました!」

私が翔さんに駆け寄ると、翔さんは「いや」と短く答える。
そして私たちは並んで歩きながらバーへと向かう。

私服姿の翔さんを見るのはこれで二回目だ。
前回はVネックの白ニットにジーンズという割とラフな感じだったけど、今日はジャケットを羽織っていて、パンツもスラックスで、この間とはまた違った印象だった。

私は今日も今日とて、『見た目だけならザ・女の子』と言われてもおかしくない、詐欺まがいなかわいい格好をしてきた。この格好なら、誰も私の中身がゴリラだとは思わないだろう。
まあ、こういうかわいい服は私が買うんじゃなくて、マミやメイコが『見た目だけでも着飾れ』と言って、毎年誕生日やクリスマスとかにプレゼントしてくれる洋服なんだけど。
ちなみに今日着ているのは、薄いピンクのニットワンピに、同じ色で揃えたミュール。
私らしくはないかもしれないけど、決して無理をしてるわけじゃなく、こういうかわいい格好もちゃんと好きだ。


そうこう考えていたら、あっという間にバーに到着した。

ふたりいっしょに店内に入ると、ママがちょっと驚いたような顔をした。

「なにー? やっぱふたり、連絡取り合ってたんだぁ」

連絡取り合ってたどころか、まさか職場が同じで、毎日顔を合わせてます、とはママには言えなかった。いきなりそんなこと言ったらたぶん相当驚かせると思うし、翔さん、銀行員のフリしてるし。


「まだほかのお客さん誰も来てないからどこ触ってもらってもいいけど。カウンター座る?」

ママの言葉に、翔さんは
「今日はテーブルで。あっちの隅の席、いいですか?」
と答えた。
カウンターじゃ、私たちの話、ママに丸聞こえだしね。

ママはなにを勘違いしているのか、「ふたりっきりで内緒の話ー? ひゅーひゅー」とか言ってきた。

内緒の話は内緒の話だけど。ママが思っているような甘い展開では……ない、よね。やっぱり。


どうしよう。翔さんと休日も会えることに浮かれてたけど、やっぱり、急に不安になってきた。ハッキリとフラれるかもしれないんだもんね……。
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