女の子として見てください!
お店の一番奥の、ふたりがけの飲食スペースのソファに、テーブルを挟んで向き合って座る。

さっきまで浮かれてドキドキしていたけど、今は不安でドキドキしてきた。


すると、彼が話を始める。

「まずは……職場ではごめん」

「え?」

「周囲に知られたらマズいからっていうのがあるとはいえ、冷たくしすぎた。先週、このバーで初めて出会った時、松城に気があるような発言をしておきながら、あまりにひどいことをしたと思って反省してる」

彼のその言葉に、私は少しだけ首を傾ける。

「それは……冷たくしたことへの謝罪ですか? それとも、気がないのに気があるような発言をしたことへの謝罪ですか? いや、気があるような発言をされたと思っているわけではないんですけど」

すると彼は、ポリ、と頬を掻いて。

「……気がなければ、あんな発言しない」

と、言った。


「そりゃあ、初めて出会った人に対して、多少の社交辞令は誰にだって持ち合わせていると思う。
でも、あの夜、松城に対してはそういう社交辞令なんかじゃなかった。
かわいいなって思ったし、確かに見た目と中身のギャップには驚いたけど、松城のこともっと知りたいと思った」

「ほ、本当ですか……?」

「じゃなきゃ、俺は『連絡する』なんて自分から言わない」

まあ、俺が連絡するより先にそっちから連絡来たけど。と彼は小さく笑った。


私って、本当に単純。
さっきまで不安でいっぱいだったくせに、また胸がきゅんと締めつけられてる。
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