女の子として見てください!
私が食い下がると、翔さんはまた驚いたような顔をした。

「もうこんなに好きになっちゃったのに、そんな理由で諦められない。
だって翔さんは、初めて私のことを『ありのままでいい』って言ってくれた男性だから」

私は彼の目をじ、っと見つめて、強い意志でそう言った。
しつこいと思われたかもしれない。だけど、泣きながら諦めるより全然マシだった。


「職場恋愛はダメとか、そんなの関係ないって思えるくらいに私のこと好きにさせてみせます!
だから、もう少しだけ私のこと、異性として、女の子として見てください!」

そう伝えると、彼はゆっくりと目を閉じた。
なにを考えているのかはわからない。

でもすぐにその瞳を開け、私のことを再び見つめると、やさしく笑って。


「好きにすれば?」

と、意地悪だけどやさしい言葉をくれた。



「本当ですか!」

「もういいよ、なんだかめんどくさくなったから」

「またまたぁ~。私の愛の告白によって、私のことやっぱり愛しくなっちゃったんじゃないですかぁ~? きゃっ」

「それはない」

翔さんはバッサリとそう言い放ったのち、話を続ける。

「言っとくけど、お前がどうしようと勝手だけど、俺はお前のことは好きにはならないから」

「初めて会った時、ちょっと気があった、ってさっき言ってたじゃないですか!」

「初めて会った時はな。今は同じ職場だから絶対にこれ以上好にはならない」

「それって、私がほかの署に異動になれば好きになってくれるってことですか?」

「どうかな。お前のギャップは悪くないと思うが、さすがに俺より体重のある窃盗犯を背負い投げ一発で確保したって聞いた時はなんか引いた」

「夫婦ゲンカしても背負い投げはしませんよ!」

「誰と誰が夫婦だ。とにかく、この話は終わり!」

彼はぶっきらぼうにそう言うと、テーブルの端に立てかけてあったメニュー表を手に取った。

お互いにお酒をひとつずつと、サラダを注文した。
途中、ママもちょっと交えて、楽しい時間を過ごした。


諦めなくて良かった。
もっともっと、ありのままの私を見てもらいたい。そしていつか好きになってもらいたい。


ううん。好きにさせてみせるから!
覚悟しててね、翔さん!
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