女の子として見てください!
急に距離を詰められてドキドキする。
急に彼の大きな右手が私の顔に触れてドキドキする。

眉間にシワを寄せて私のことをじとっと睨みつける彼の表情も。
辺りに誰もいないことを確認してちょっとホッとしてみせる彼の表情も。

彼の全部が大好きだから、彼のなにもかもにドキドキキュンキュンしてしまう。


そのため、思わずガマンができなくて。


――ペロ。


私の口元を覆っていた彼の右手の平を、つい舐めてしまった。


「オイ! なにすんだ!」と、彼はバッと私の口元から手を離した。


「すみません。性的な欲求が抑えきれず」

「犯罪者みたいなことを言うな」

うん。確かに今のは自分でも変態っぽいと思った。


でも、だからといってわざわざハンカチ取り出して右手拭き拭きしなくても!



だけど、確かにデートの約束をした!

「またLINEしますね! 日にちとか場所とか決めましょうね!」

「あぁハイハイ。ていうか勝手に決めといてよ」

「なんでそんな冷たいこと言うんですか! わかりました、決めておきます!」

「決めとくのかよ」

そんなやりとりをすると、翔さんは私に背を向けて部署の方へと戻っていった。

一分一秒をムダにしたくないと言わんばかりの、足早な歩き方。
でも、それはそうだよね。同じ刑事といっても、若くして理事官に出世した翔さんは、私なんかよりも毎日が忙しいはずだ。

それでも、そんな彼の貴重なお休みの日に、私とデートしてくれる。うれしすぎる!


あ~、当日なに着ていこっかなあ~。
ドキドキキュンキュン、そしてワクワクが今から止まらない!
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