女の子として見てください!
「なっに、飲ませるんだお前は!」

「えっ、おいしくないですか!? 私これ飲むといつも元気になるんです!」

「人の好みを否定はしないが、なにも言わずに自分以外の人間に飲ませるな!」

翔さんはちょっと怒りながら私に水筒のコップを返してくる。
お気に召さなかったようだ。残念。


「はあ。また気分悪くなってきたけど、そろそろ次のとこ行くか」

翔さんはそう言って席から立ち上がった。


「もう大丈夫なんですか? もう少し休んだ方がいいんじゃないですか?」

私も席を立ち、歩き出す翔さんの隣に立ってそう言うけど。


「いいんだよ。……時間、もったいないだろ」

「え?」

「……せっかく遊びに来てるんだからさ」


翔さんはそっぽを向いてそう話すから、表情はよく見えなかった。

でも、耳がほんのり赤くなっているのがわかって。


マムシドリンクが身体を温めたから……じゃないよね?

照れて、くれてる?
私が遊園地を楽しめるように配慮してくれてる?
翔さん自身が私と遊園地で過ごすことを楽しもうとしてくれてる?
全部、正解だって思っていい?



そう思って、うれしくなって、彼に手を伸ばそうとした――その時。



「動くな」


突然、背後からそんな低い声が聞こえてきたとともに、私の目の前に、ナイフが突き立てられた。




……んん?
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