女の子として見てください!
「まあ付き合ってもナニしてもいいんだけどな。職場恋愛はまあアレだが、それでクビになるわけでもねーし。ただ伊浅。松城は本気で”犯罪を呼ぶ女”だからな。冗談じゃないってことは今日よくわかったろ」

ややお下品まじりな課長の忠告に、翔さんは。


「ははっ。まあ、犯罪を呼び込んでも自分で処理してくれるからいいんですけど」

と、また笑ってみせた。

翔さんの笑顔を初めて見た時は、それはもうキュンキュンして仕方なかったけど、今はこの笑顔が、世界で一番憎たらしいかもしれない!

なんで笑うの。自分で処理ってなに。私だって私だって……。




それからしばらくして、課長は再び取調室の方へと戻っていった。

廊下のソファに、再び私と翔さんだけがそこで待機する。



「せっかくの休日なのにな。何時ごろ帰れるだろうな」

翔さんの方から、そんなふうに話しかけてくれるけど、私は。


「……そうですね」

そっけなく、そう答えるのみだった。


「さっきから、なんか機嫌悪い?」

「……」

「まあ、休日が潰れたんじゃ、機嫌も悪くなるよな」


なに言ってるの。怒ってるのはそこじゃないのに。



「……ひどいじゃないですか」

私は自分の気持ちを口にした。
ほんとは、私が言う前に気づいてほしかったけど。


だけど翔さんは「え、なにが?」なんて言う。
私はうつむかせていた顔をバッと上げ、声も荒げた。


「なにがじゃないですよ!
私、目の前でナイフ突き立てられてたんですよ!? それを心配するどころか、あんなふうに爆笑するって!」

「え、だって心配要素なにひとつなかったし。松城だって怖くなかっただろ?」

「怖くなかったけど心配はしてほしかったの!
人質にされてるのに好きな相手から目の前で爆笑される女なんて、この世のどこ探しても私くらいだと思う! ひどいよー!
昼間も言ったけど、本当に、私のことなんだと思ってるんですかー!!」
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