女の子として見てください!
大げさなくらいに騒いでいると、翔さんから「ちょっとうるさいから黙って」と制される。
うるさいって。確かにうるさかったと思うけど、ひどいや。


……人質になっている時に笑われたからといって、翔さんが冷たい人間だとか、薄情な奴だとか、そういうことを言っているわけじゃない。
人質になっているのが私じゃなくて、もっと”女の子”だったら、翔さんはきっと、全力でナイフ男と戦っただろう。
笑われたのは、人質が私だったから。

翔さんのことは好き。
でも、翔さんに女性として見てもらいたくてがんばってきたけど、さすがの私も、ちょっと自信なくなってきた。


やっぱり、私じゃダメなのかな……。そう、思っていた時。



「……悪かったよ」

と、翔さんが謝った。


「確かに、笑ったのはひどかったよな。ごめん」

「……」

ちゃんと謝ってもらったのに。『ごめん』っていう欲しかった言葉をもらえたのに。
急に言われたせいか、私の気持ちはなんだかしっくりこない。


……違う。
謝ってほしかったわけじゃないんだ。欲しかった言葉は、『ごめん』じゃない。



「もう、いいです。翔さんが私のこと、女性として見てくれていないことはよくわかりました……」


と、気分はドン底の状態だった。恋には前向きなのに。うしろ向きなことなんて考えたくないのに。
でも、さすがの私も今回の件はショックを隠し切れなかった。



すると。




「お前を女性として見ていない? 俺が?」

翔さんは私のことを見つめながら首を傾げた。
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