女の子として見てください!
「私、翔さんのこと諦めなくていいんですか?」

「……いいんじゃない」

「あはは! なんでそんなに偉そうなんですか! でも好きです!」

良かった。
翔さんが私のことを『ありのままでいい』って言ってくれたのを、もっと心の底から信じれば良かったんだ。
翔さんは私のこと、最初から”女性として”、”異性として”見てくれていたんだ。



そう思えたから、私はさっきまでの怒りなんて忘れて幸せでいっぱいだったんだけど。


「……でも、あの場であんなふうに笑ったのは、ほんとに失礼だったよな……」

と、急に再び反省し始める。

もういいよ、と私は思うんだけど、翔さんの後悔はやまない様子で。意外に、気にしぃ?



「よし」

翔さんはなにかを思いついたように、私の顔をじっと真剣に見つめ、そして。


「お前、なにか欲しいものあるか?」

「はっ?」

思わず、そんな間抜けな声が出た。

だって、急に欲しいものなんて聞かれても。
償いのつもりでそう聞いてくれてるんだろうけど、私はもう気にしてないし。


だけど翔さんは「ホラ、早く言え。ただしあんま高いものはナシな。ちなみにあと五秒以内に答えろ」と言う。


「え、えっ」


勝手にカウントダウンを始められると、気持ちが変に焦ってしまう。
欲しいものなんてなにもないはずなのに、急いでなにか答えなきゃ、みたいな。そんな感覚になる。


だから、私は。


「二、一……」

「キっ、キスしてください!」

と、答えてしまった。つい本音が、ってやつだった。
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