女の子として見てください!
地上に出てくると、私と葉子ちゃんは壁の隠し扉を使って裏通りへと出た。

キャバクラが立ち並んでいるとはいえ、それなりに人通りもあるし、ここまで出てきたらひとまずは大丈夫だろう。


「よくがんばったね、葉子ちゃん。私、署に電話するから、ちょっと待ってね」

そう言ってスーツのパンツのポケットから携帯を取り出し、画面を操作していると。


「……美桜っ!!」

聞き慣れた――そして大好きな声が聞こえて――顔を上げると、そこにいたのはやっぱり、翔さんだった。
ずっと走ってきたみたいで、肩で息をしている。


あれ、今名前で呼んだ?とか、どうしてここに?とか聞こうとするよりも先に、「バカヤロウ!!」と怒鳴られる。

仕事に厳しい翔さんに怒られることはよくあるけど、ここまで声を荒げる彼を見るのは初めてだった。


すると翔さんは。

「飯尾から聞いた。裏通りの話を聞いたすぐあとに、お前が三丁目に向かったって。絶対無茶なことをするんだろうって思ったら、いても経っても……」

ウソ。心配してきてくれたの?
私、翔さんのことを怒らせていたみたいなのに……?

それは、上司としての心配かもしれない。
でも、まるで動揺していたかのように名前で呼んだり、そんなふうに肩で息をして必死な顔をしてくれたり……。

心配をかけておきながらこんなことを思っちゃいけないのはわかっているのに、胸がときめいてしまった……。

翔さんと話せる機会があったらまず謝ろうって思っていたのに、胸がいっぱいになって声が出ない。
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